「感情労働」という言葉を知っていますか。
近年、サービス業が増加し、接客業務に従事する人々が急増しました。
お客様とのコミュニケーションは、時に、本来の自分ではない部分を必要とすることもあります。
ところが、感情労働についての認知度は高くありません。基本的な定義や対応策を述べます。
感情労働とは
自分の感情を誘発したり抑圧したりしながら、相手の中に適切な精神状態を作り出すために自分の外見を維持する労働
と定義されています。
もう少し特徴をみていくと、
・対面あるいは、声による顧客との接触が不可欠
・労働者は他人に何らかの感情変化を起こさせなければならない。
・雇用者は研修や管理体制を通じて、労働者の感情労働をある程度支配する
というものが目立ちます。
感情労働の特性
・情緒的エネルギーを大量に消費する。
・自分と顧客間の互酬関係はない。
・不可視性が高く、精神的に消耗しやすい。
感情労働に関連して
・表層演技…外見のみ取り繕う。本来の自分は変えない。
・深層演技…外見だけでなく、本当の感情も変える。演技が本来の自分であると思い込む。
また、労働とは実は3種類あるといわれています。
1、肉体労働
2、頭脳労働
3、感情労働
このことからも、感情労働は従来の労働の延長であることがわかります。
感情労働を特に必要とする職業
客室乗務員、コールセンター職員、教師、医師、看護師など。。
挙げればきりがありません。お客様との対面業務を必要とする職種は、少なくとも感情労働を行う必要がでてくる可能性があるでしょう。
感情労働が心にもたらす影響
主に2つの影響があります。
・肯定的影響
・否定的影響
肯定的影響に関係するもの
笑顔、裁量性、自分が承認されている、有能であると感じること、まわりからのよい評価
などが挙げられます。
自分を押し殺して無理に行うものが感情労働であると思われがちですが、
相手を意識して感情労働を行う結果、演技だとしても相手に好印象を与え、
人間関係が良好になるという面もあります。
否定的影響に関係するもの
我慢、演技、一本化、深入り、互酬関係
肯定的影響を及ぼす要素から一転、自分自身に無理を強いているイメージが強いと思います。
この状態が続けば、心を病んでしまって仕事を長期間にわたって休む可能性も十分にあります。
この面が、感情労働の負の側面としてよくクローズアップされるのではないでしょうか。
感情労働のデフレスパイラルに陥らないために
何よりも、まわりのサポートです。
個人で気をつけることはもちろん大切ですが、身近な人の声かけや気遣いによってどれだけ救われるかわかりません。
その輪がどんどん広がって、ひとつのチームのように職場が一体となるような雰囲気が作れれば、感情労働もきちんと良い面の効果を引き出せると思います。
また、経営理念などにも感情労働のサポート体制について織り込まれていれば、それが社内全体に浸透していきます。
最後に、その循環をまわすキーパーソンが不可欠です。
このように全員一丸となって取り組む雰囲気が、感情労働をマネジメントすることの本質であると考えます。
まとめ
感情労働について、イメージをつかんで頂ければ幸いです。
今後、さらにこのような悩みは増加していくでしょう。
感情労働の背景にあるものはおもてなしの精神ですが、度が過ぎてサービスを施す側が疲弊しては本末転倒です。
サービスを受ける側の感謝の心も忘れずにいたいものです。